女性特有の病気に備える医療保険とは?
必要性を年代別に解決!
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女性特有の病気には、女性専用の医療保険や一般的な医療保険に付加する女性専用の特約等で備えることができます。
女性特有の病気は年代ごとにリスクが異なるため、正しく理解し、保険に入る際は必要な保障を確保するようにしましょう。
この記事では、女性のための保険に関する基礎知識と、女性向けの保障の選び方や必要性、メリット・デメリットについて解説します。
(この記事では女性特有の病気に備えられる女性専用の医療保険や一般的な医療保険に付加する女性専用の特約等をまとめて、「女性のための保険」と記載します。)
- 女性特有の病気について手厚い保障を受けられる女性のための保険がある
- 女性は年齢やライフステージごとにリスクが異なり、20代でも女性特有の病気にかかる可能性がある
- 女性のための保険は、すでに妊娠していたり病気になっていたりすると加入ができない、もしくは部位不担保や保険料割増し等の特別条件付きでの加入となる可能性があるため、早めに検討するのがおすすめ
女性のための保険とは?
医療保険のなかには、「女性保険」とも呼ばれる、女性のための保険が存在します。
具体的にどんな保険なのか、その基礎知識からチェックしてみましょう。
女性のための保険とは、妊娠・出産のトラブルや女性特有の病気に手厚く備える医療保険のこと
女性のための保険とは、妊娠・出産にまつわるトラブルや女性特有の病気への保障を手厚くした医療保険のことです。
病気やケガによる入院・手術等で保障を受けることができるのが通常の医療保険です。一般的な女性のための保険の場合、女性特有の病気等で入院・手術等をした場合、通常の医療保障に上乗せされる形で給付金等を受取ることができるため、その他の病気に罹患した時よりも多くの入院給付金や手術給付金等を受取ることができ、より手厚い保障を確保できます。
保障される女性特有の病気とは?
女性のための保険でカバーできる「女性特有の病気」とは、乳がんや子宮がん、卵巣がん等乳房や子宮、卵巣に関わる病気や、妊娠・分娩に関わる合併症等のことです。正常妊娠や自然分娩による出産は、入院した場合も保障の対象外になりますが、切迫早産や妊娠時高血圧症候群、帝王切開等のように何らかの異常やトラブルで入院が必要になった場合には、女性のための保険から給付金が支払われます。
ただし、保障範囲は保険会社や保険商品によって異なるため、加入時によく確認しておく必要があります。
保険の種類は?
女性のための保険には、通常の医療保険と同じく、定期型と終身型があります。
ライフステージの変化に合わせて保障内容を見直したい場合や当面の保険料を抑えたい場合には定期型、一定の保険料で一生涯の保障を確保したい場合は終身型を選びましょう。自身のニーズに合わせて最適なタイプを選びましょう。
女性のための保険は必要?年代別・ライフステージ別に解説
女性は、年代やライフステージごとに女性特有の病気にかかるリスクが異なります。
ここでは、女性のための保険の必要性を、年代別やライフステージ別に解説します。
20代~30代女性
日本子宮内膜症啓発会議「子宮内膜症 Fact Note」によると、日本には月経困難症患者が800万人以上いると推定されており、そのうち医療機関で治療を受けているのはわずか10%(約80万人)といわれています。10 代後半から 20 代前半は身体的な異常が認められない機能性月経困難症が多く、子宮や卵巣の病気が原因で起こる器質性月経困難症は加齢とともに増える傾向があります。
また、器質性月経困難症を患う20代・30代の半数以上は子宮内膜症を原因としています。子宮内膜症は進行すると不妊の原因にもなるため、特に出産を希望する女性は注意が必要です[注1]。
また、子宮筋腫の場合、悪性腫瘍の一種である子宮肉腫と判別が付きにくいことから、治療途中だったり一定の経過観察期間を過ぎていなかったりすると、保険に加入できない可能性があります。
一方、自己免疫疾患の一種であるバセドウ病は男女ともに罹患する病気ですが、男女比は1:3~5人と女性の罹患割合が圧倒的に多く、特に20代~30代の女性に多い疾患として知られています[注2]。
いずれも年齢の若い女性も罹患する可能性が高いだけでなく、症状によっては日常生活に支障をきたす場合もあります。また乳がんに関しても罹患のピークは40代以降ですが、20代後半からも徐々に増加していきます[注3]。このようなことを考えると、20代~30代女性でも、早めに女性のための保険への加入を検討したほうがよいでしょう。
40代~50代女性
40代以降になると、若年層よりも健康リスクが高くなりますが、なかでも特に気を付けたいのが乳がんです。
乳がんは、女性がかかるがんのなかで最も罹患数が多く、特に40代~50代の罹患率は、人口10万に対して約149人~230人にのぼっています[注3]。
国立がん研究センターがん情報サービスによると、2019年のがん罹患者数(40~50代)の順位は以下のとおりです(上皮内がん除き)[注4]。
総数 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
1位 | 乳房 | 大腸 | 乳房 |
2位 | 大腸 | 胃 | 子宮 |
3位 | 子宮 | 肺 | 大腸 |
4位 | 肺 | 前立腺 | 子宮体部 |
5位 | 胃 | 腎・尿路(膀胱除く) | 卵巣 |
※大腸を結腸と直腸に分けた場合の順位 | 結腸4位、直腸6位 | 結腸3位、直腸5位 | 結腸6位、直腸10位 |
また、国立がん研究センターがん情報サービスによると、2021年のがん死亡数(40~50代)の順位は以下のとおりです[注5]。
総数 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
1位 | 大腸 | 大腸 | 乳房 |
2位 | 肺 | 肺 | 子宮 |
3位 | 膵臓 | 膵臓 | 大腸 |
4位 | 胃 | 胃 | 卵巣 |
5位 | 肝臓 | 肝臓 | 膵臓 |
※大腸を結腸と直腸に分けた場合の順位 | 結腸4位、直腸5位 | 結腸5位、直腸6位 | 結腸4位、直腸10位 |
乳がんの死亡率は、大腸がんや肺がん等に比べるとやや低めですが、治療には入院や手術を伴うケースが多いため、子育て中の方であれば特に、家計や子どもに少なからず影響をもたらす可能性があります。
がん治療は公的医療保険制度の適用対象となるものばかりではなく、先進医療や自由診療のように全額自己負担となる治療を選択することもあります。自分の治療費がかさんで子どもの教育費にお金をまわしきれない、ということにならないよう、お金の心配をせずに治療に専念できるような女性のための保険で万一に備えておくと安心でしょう。
60代以降の女性
60代以降になると男女ともに健康リスクが上昇し、特にがんの罹患率が高くなってきます。
また、骨の代謝バランスが崩れることにより、骨そのものがもろくなる「骨粗しょう症」にかかりやすくなるのもシニア世代の特徴です。
骨粗しょう症は男女ともに発症するリスクがありますが、特に女性は閉経を迎えると、骨芽細胞を活発にする女性ホルモン「エストロゲン」が激減する影響で、男性よりも発症リスクが高いと言われています。
60代は定年退職を迎える時期であり、人によっては貯蓄と年金収入のみで暮らすことになります。
入院や手術にかかる医療費が家計を圧迫するおそれがありますので、女性のための保険で手厚い保障を用意しておくと安心でしょう。
妊娠・出産を控えている方
健康に自信がある人でも、妊娠中は重度のつわりで苦しむことや、切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群等で思わぬ入院となることがあります。また、妊娠中の経過が順調でも帝王切開で出産する等、いわゆる「異常分娩」と呼ばれるトラブルに見舞われることがあります。
なかでも帝王切開の割合は年々増加傾向にあり、厚生労働省がまとめた資料によると、約20%(約5人に1人)が帝王切開で出産していることが分かります[注6]。
異常分娩は公的医療保険制度の適用対象であるため、自己負担は3割となり、高額療養費制度の対象にもなりますが、入院中の食事代や本人が希望して個室や少人数部屋を選んだことで発生する差額ベッド代等の費用は公的医療保険制度の対象外となります。また、帝王切開で出産した場合には、自然分娩よりも入院日数が長期化するため、食費や差額ベッド代等の負担はその分増えると考えられます。貯蓄が十分ではない等の状況によっては自己負担額が家計を圧迫するおそれがあります。ただし、加入している健康保険組合に申請すると、1児出産につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産された場合は40.8万円)が支給されますので、ぜひ活用してください。
妊娠中に加入できる女性のための保険もありますが、注意点として通常時よりも選択肢は限定されていることがあげられます。また、妊娠中に加入できたとしても、その妊娠については保障の対象外とする等特別条件が付くことが多いため、肝心な妊娠・出産に備えられない可能性が高くなります。妊娠中の不安を少しでも減らすためにも、妊娠・出産を予定している場合は、妊娠がわかる前に、女性のための保険を早めに検討することをおすすめします。
女性のための保険、メリット・デメリットは?
女性のための保険への加入を検討するときは、メリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切です。
ここでは、女性のための保険のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
メリット
女性のための保険のメリットは、女性特有の病気にかかった場合、手厚い保障を受けられる点です。
女性のための保険は、一般的には通常の医療保障に上乗せされる形で一時金や給付金が支給されるので、治療費や入院費の補填に活用できるのはもちろん、家族がお見舞いに来るときの交通費や、日常の生活費等の出費に充てることも可能です。
また、家計に不安を感じている方であっても充実した治療を受けられ、治療に専念できるという心理的なメリットも考えられます。
デメリット
女性のための保険のデメリットは、一般的な医療保険に比べると、女性特有の病気に備える保障が充実している分、保険料がやや割高になる点です。
その分、保障は手厚くなりますが、月々の保険料が現在の生活を圧迫してしまうのは本末転倒ですので、保険に入る目的と収支バランスを考えて商品を選ぶ必要があります。
また、ご検討中の方ですでに医療保険に加入している場合、新たに女性のための保険に入ると保障が重複してしまう場合があります。
特に、医療保険と女性のための保険の保険会社が別々である場合は、保障の重複が発生しやすいため、加入時に保障内容や保障範囲をしっかり確認しておきましょう。
ただし、女性特有の病気で入院や手術をした場合には、通常の医療保険よりも手厚い保障を受けられます。これから妊娠や出産を希望する方や、乳がんや子宮がん等の女性特有の病気が気になる女性にとっては、検討する価値があるでしょう。
加入するときは早めの検討が必要
「若いうちは病気にならないだろう」と考えて、医療保険への加入を見合わせる方も少なくありません。
実際、公益財団法人 生活保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」の統計によると、20代で疾病入院給付金が支払われる生命保険に加入している女性の割合は半数程度に留まっています[注7]。
しかし、「女性のための保険は必要?年代・ライフステージ別に解説」でも説明した通り、若年層でも女性特有の病気にかかるリスクはゼロではありません。
妊娠・出産を機に医療保険への加入を検討される方も多いのですが、妊娠してから保険に入ろうとした場合、加入できたとしてもその妊娠・出産については保障の対象から外れる等、特別条件付きでの加入となる可能性が高くなります。
また、過去に帝王切開の経験がある場合、再び帝王切開になるリスクが高いとみなされ、数年間は子宮を部位不担保にする等の特別条件付きでの加入となることがよくあります。
妊娠・出産以外でも、現時点で何らかの病気にかかっていると保険の加入を断られたり、付加できる特約等のプランを制限されたり割増保険料や部位不担保といった特別条件付きでの加入となったりするおそれがあります。
このように健康状態等により加入のしやすさが異なるため、「何か」あってから女性のための保険に加入するのではなく、健康なうちから将来に備えて早めに加入を検討することをおすすめします。
女性のための保険で、女性特有の病気へのリスクに備えよう
女性は20代の頃から、子宮筋腫や子宮内膜症といった女性特有の病気にかかるリスクがあります。
また、妊娠・出産時には切迫流産や帝王切開等のリスクをかかえています。60代以降は骨粗鬆症等、年齢ごとにリスクは多様化していきます。
女性のための保険に加入することで、女性特有の病気にかかった時に手厚い保障を受けられますが、すでに妊娠していたり、病気にかかっていたりすると加入が難しくなってしまいます。
いざというときに必要な保障を受けられるよう、早い段階から女性のための保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
- 社会保障制度に関しては2023年1月時点の内容を参考に記載しております。
- このページに掲載している保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。
また、記事中で掲載している保険商品に関して、当社では取扱いのない保険商品もあります。
各保険会社が取扱う保険商品の内容については、各保険会社へお問合せください。 - 本記事は、当社からファイナンシャルプランナーに依頼し執筆いただいた原稿を、当社で編集したものです。
- [注1] 「子宮内膜症 Fact Note」(日本子宮内膜症啓発会議)
- [注2] 「バセドウ病」(一般社団法人 日本内分泌学会)
- [注3] 「がん種別統計情報 乳房」(国立がん研究センターがん情報サービス)
- [注4] 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
- [注5] 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
- [注6] 令和2(2020)年 医療施設(静態・動態)調査(確定数)病院報告の概況(厚生労働省)
- [注7] 「令和元年度 生活保障に関する調査」(公益財団法人 生活保険文化センター)
【執筆者プロフィール】
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー
ハートマネー代表
www.heart-money.net
2児の出産後、FP(ファイナンシャルプランナー)とキャリアカウンセラーの資格を取得。子育て世帯や共働き世帯のライフプラン相談やセカンドキャリア層に向けたマネーライフプランのアドバイスが得意。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、家計相談だけでなく執筆や講演業務にも精力的に活動中。