三大疾病とは?保険で備えた方が良いの?

入院中の男性
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日本人の死因の上位を占める「がん(悪性新生物)」、「心疾患」、「脳血管疾患」。この3つの病気を総称して「三大疾病」と呼びます。
これらの三大疾病は、通常の医療保険でも保障されますが、三大疾病に備えるための「三大疾病保険」やがんに備えるための「がん保険」に加入することで、より手厚く備えることができます。保険を準備するときは、三大疾病になった場合に必要となる保障も押さえておきましょう。
この記事では、三大疾病の説明とともに、三大疾病保険の仕組みについて解説します。保険の選び方の参考にしてください。

この記事のポイント
  • 三大疾病とはがん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患の3つの総称で、日本人の死因の上位を占める
  • 三大疾病は治療期間が長引くこともあるので、治療費やそのほかの経済的負担を考慮すると、保険で備えておくのが望ましい
  • 三大疾病の保障は、三大疾病で所定の状態になった場合に一時金を受取れる三大疾病保険で備えることがおすすめ
【目次】

三大疾病とは?

三大疾病とは三大死因とも呼ばれており、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患のことを指します。

この三大疾病のリスクに備える保険が三大疾病保険です。
三大疾病への備えは必要でしょうか。三大疾病の詳細について解説します。

三大疾病は日本人の死因の上位を占める病気

厚生労働省の「人口動態統計(2021年)」によると、日本人の代表的な死因は下表のとおりです[注1]

死因男性
(割合)
女性
(割合)
がん(悪性新生物) 22万2,467人(30.1%) 15万9,038人(22.7%)
心疾患 10万3,700人(14.0%) 11万1,010人(15.8%)
老衰 4万1,286人(5.6%) 11万741人(15.8%)
脳血管疾患 5万1,594人(7.0%) 5万3,001人(7.6%)
肺炎 4万2,341人(5.7%) 3万853人(4.4%)

これを見ると、三大疾病が男女ともに日本人の死亡原因の上位を占めていることがわかります。

がん(悪性新生物)とは?

「人口動態統計(2021年)」において、日本人の死因のうち最多となっているのががん(悪性新生物)です。がん(悪性新生物)は悪性腫瘍とも呼ばれており、国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報サービス「がんという病気について」によると、がん細胞については以下のよう記載されています。

無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)します。一方、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍を良性腫瘍と言います。良性腫瘍は、もとになる細胞の種類や腫瘍の大きさ、できた場所によっては症状がでることがありますが、多くの場合、手術で完全に取りきることができれば再発することはありません。」また、「遺伝子に傷がついた異常な細胞のうち、上皮内にとどまっているものを、上皮内新生物と言います。上皮内新生物は、基底膜を越えていないため、多くの場合手術で取り除くことが可能で、転移していることはほとんどありません。[注2]

心疾患とは?

心疾患とは心臓に発生する病気を指します。脈の乱れを起こす病気や、冠動脈や心臓弁の病気、先天性の心臓病等様々なものが含まれます。代表的な疾患として、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や不整脈、心不全が挙げられます。

脳血管疾患とは?

脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによって、脳細胞が破壊される病気の総称です。おもな脳血管疾患には「出血性脳血管疾患」と「虚血性脳血管疾患」の2つのタイプがあり、これらは「脳卒中(脳内出血・くも膜下出血・脳梗塞)」とも呼ばれています。

脳血管疾患は、命に係わる恐ろしい病気です。また、一命をとりとめたとしても手足の麻痺、言語障害や視覚障害、感覚障害等、さまざまな後遺症をもたらしてしまう恐れもあります。

三大疾病は保険で備える必要があるの?

日本人の死因の上位を占めるということは、同時に誰もがリスクを持っている病気であると言えます。三大疾病を保険で備える必要性について、もう少し詳しく見ていきましょう。

三大疾病は入院・通院患者数も多い

厚生労働省「患者調査の概況(2020年)」より、三大疾病の入院・外来患者数を以下のとおり抜粋してみました[注3]

疾病分類入院患者数(割合)外来患者数(割合)
総数 1,211.3千人(100%) 7,137.5千人(100%)
がん(悪性新生物) 112.9千人(9.3%) 182.2千人(2.6%)
心疾患(高血圧性のものを除く) 58.4千人(4.8%) 129.6千人(1.8%)
脳血管疾患 123.3千人(10.2%) 74.2千人(1.0%)

がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患の三大疾病だけで、全入院患者数の約25%以上を占めていることがわかります。また、脳血管疾患については外来患者数よりも入院患者数の方が多いことにも気がつきます。

治療期間が長引くことが多く、医療費の負担も大きい

先ほどの「患者調査の概況(2020年)」によりますと、三大疾病の入院平均在院日数は、がん(悪性新生物)が19.6日、心疾患が24.6日、脳血管疾患が77.4日となっています[注3]。三大疾病の中でも特に脳血管疾患の場合には、療養期間が長期化しやすいことがわかります。

また、がんの場合、入院日数は短くても退院後に抗がん剤治療で長期に亘って通院治療を行う傾向があります。入院費用だけでは医療費は計れません。

医療費の自己負担額が多くなった場合、公的医療保険制度の高額療養費制度によって自己負担額を軽減できる場合があります。高額療養費制度について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もあわせて確認してみてください。

リンク 「高額療養費制度の仕組み、知っていますか?」

保険適用外の費用がかかる

ここまでは健康保険適用の治療を前提にお話ししてきましたが、先進医療のような特別な治療を受ける可能性もあります。先進医療を受ける場合、通常の診察や検査等には公的医療保険制度が利用できますが、先進医療の技術料は全額自己負担になります。

以下に代表的な先進医療技術と技術料等のデータを載せていますが、例えば、先進医療の一つ、がんの重粒子線治療を受けた場合、1回あたり約318万円の技術料がかかり、これが全額自己負担となります。この技術料については高額療養費制度が利用できません[注4]

先進医療技術技術料(1件当たり平均額)平均入院期間年間実施件数
高周波切除術を用いた子宮腺筋症核出術 300,857円 10.2日 105件
陽子線治療 2,649,978円 15.7日 1,285件
重粒子線治療 3,186,609円 5.2日 683件
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 108,183円 2.6日 1,338件

このほかにも、以下のような保険適用外の費用負担が考えられます。

  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代や居住費
  • 交通費や宿泊費
  • 漢方薬やサプリメントの購入費
  • 医療用ウィッグの購入費(薬の副作用等)
  • セカンドオピニオンにかかる費用

セカンドオピニオンは、担当医以外の医療機関の医師に「第2の意見」を聞くことを言います。担当医が提示する治療法に対して「別の治療法はないのだろうか」といった疑問があるような時に活用し、納得のいく治療法を確認することができます。セカンドオピニオンは公的医療保険制度の対象とならず、かかる費用は全額自己負担となります。

治療費以外にも、こうした負担額が重くのし掛かってくることも視野に入れなければいけません。

収入が減少することもある

三大疾病になった場合、療養に期間を要したり、身体に後遺症をもたらしたりすることも考えられます。その場合、元の職場に復帰することが困難になる可能性もあり得るでしょう。
年齢やご家族がいるかいないかにより必要性は異なりますが、働けない期間の生活費の補填、またはその後の収入減少についても、十分に備えておく必要があります。

三大疾病にはどんな保険で備えられる?

リスクの高い三大疾病に対しては、どのような保険で備えておけば良いのでしょうか。三大疾病保険の仕組みと特徴、加入時の注意点について解説します。

三大疾病で一時金が支払われる保険

三大疾病保険とは、一般的にがん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中等で保険会社の定める所定の状態になった場合に、一時金を受取れる保険です。三大疾病保障保険や特定疾病保険といわれることもあります。急性心筋梗塞だけでなく心疾患全体、脳卒中だけでなく脳血管疾患全体を保障している保険商品もあるので、保障範囲や支払条件等を比較して選ぶと良いでしょう。

一時金の金額については、保険会社の定める範囲内で、加入時に希望の金額を設定することができます。

【三大疾病保険の支払事由】

三大疾病保険で一時金を受取るための条件は、疾病によっても異なります。

多くの場合、がんは診断確定された段階で受取れますが、急性心筋梗塞や脳卒中の場合は診断されても一定の条件を満たす必要があります。例えば、「初めて医師の診療を受けた日から、その日を含めて60日以上の労働制限を必要とする状態が続いたと医師に診断された場合」を条件とする保険会社がある一方で、「その疾病の治療を直接の目的として入院または手術を受けた時」としている保険会社もある等、保険会社や保険商品によってずいぶんと異なります。保険契約の際は給付条件についてもよく確認しましょう。

また、保険会社によっては、死亡時に給付金を受け取れる商品もあります。

がん保険との違いは?

一般的には三大疾病保険よりもがん保険の方が人気があります。そのため、三大疾病保険への加入を検討する際には、がん保険と比較することもおすすめします。それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめました。

メリットデメリット
三大疾病保険 がんだけでなく、三大疾病に備えられる 保障対象が広がるため、保険料が高くなる
がん保険 保障をがんに絞っているため保険料が抑えられる 急性心筋梗塞や脳卒中には備えられない

三大疾病のなかでも特にがんに対する不安があれば、がん保険でも保障を確保することができます。自身に合った保障を検討しましょう。

三大疾病保険料払込免除特約もある

医療保険や死亡保険には保険料の払込みが免除される特約がつけられることもあります。初めてがんと診断確定された時や、急性心筋梗塞や脳卒中で保険会社が定める所定の状態になった時に、以後の保険料の払込みが免除されます。大きな病気になったときにお金の心配をせずに、保障を継続できます。

三大疾病保険に加入するときの注意点

三大疾病保険は、保険会社によってもその内容が異なります。加入を検討するときは以下の点に注意しましょう。

【注意点1.支払事由】

三大疾病保険の支払事由は、保険会社によって以下のような違いがあります。

  • がんの場合、上皮内新生物を含むか、含まないか
  • 心疾患の場合、急性心筋梗塞のみか、全ての心疾患が対象か
  • 脳血管疾患の場合、脳卒中のみか、全ての脳血管疾患が対象か

また、支払条件に入院が含まれているかどうかや支払条件に該当するための入院日数等も保険会社によって異なります。加入を検討している保険会社の商品がどのような支払事由なのかは、事前に必ず確認しておきましょう。

【注意点2.給付回数】

給付金は1回のみ受取れるか、複数回受取れるかというように、給付回数に限度があるかどうかもチェックが必要です。がんは再発や転移のリスクが、脳卒中には療養が長期化するリスクがあります。回数無制限で受取れる保険であれば、条件を満たせばそのたびに給付を受取ることができます。ただし、その分、保険料が高めに設定されている場合もあるため、保険料と保障のバランスを見ながら検討しましょう。

【注意点3.免責期間】

一般的にがんの保障には、加入から90日間もしくは3カ月の免責期間があります。この免責期間中にがんと診断されても、保障の対象外となり給付金を受取ることはできません。加入を検討する際は、免責期間も考慮して、加入時期を検討しましょう。

自分に合った保険で三大疾病に備えよう

今の健康状態が良い方でも、三大疾病は死亡者数や入院患者数を考えると、日本人にとってリスクの高い病気であると言えます。もちろん、生活習慣の見直し等の努力も必要ですが、万一のときには治療が長引いてしまったり多くの費用が必要となったりするケースも多いため、保険で備えておくことを検討しましょう。
ただし、三大疾病保険は保険会社・保険商品によって、保障内容や給付条件、保険料がずいぶんと異なります。その内容を比較検討し、十分に理解したうえで加入することが重要です。
日々の家計の保険料負担のことも考慮しながら、大病を患ったとき治療に専念できるよう自分に合った保険を選びましょう。

  • 社会保障制度に関しては2023年1月時点の内容を参考に記載しております。
  • このページに掲載している保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。
    また、記事中で掲載している保険商品に関して、当社では取扱いのない保険商品もあります。
    各保険会社が取扱う保険商品の内容については、各保険会社へお問合せください。
  • 本記事は、当社からファイナンシャルプランナーに依頼し執筆いただいた原稿を、当社で編集したものです。
注釈

【執筆者プロフィール】

執筆者プロフィール画像

世良 真貴男(せら まきお)

ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー
相続診断士

大手小売業の経営コンサルティングを経て、ファイナンシャルプランナーへ転身。年間200組以上を担当し、家計や保険、住宅ローン、相続や資産運用など、顧客の資産を最善化するカウンセリングを行なっている。