上皮内新生物(上皮内がん)とは?がんとの違いは?がん保険の選び方のヒントも解説
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日本人が79歳までにがんになる割合は、男性で65.5%、女性で51.2%。
つまり、日本人は約2人に1人の割合で、79歳までに、がんにかかっていることが統計上わかっています。
[注1]
なお、年齢が上がるほどにがんの罹患率は上昇していきます。
ところで、「がん」と似た概念である「上皮内新生物(上皮内がん)」という言葉を皆さんはご存知でしょうか?
上皮内新生物とがん(悪性新生物)とは似て非なるものです。
この両者の違いを知って、あらかじめ適切に備え、定期的な検診等で早期発見を心がけていれば、上皮内新生物 を過度に怖がる必要はありません。
がん(悪性新生物)と上皮内新生物の違いが分かれば、自分に合ったがん保険を選びやすくなります。
がん保険はまだ検討中という人も、すでに加入している人も、この記事でしっかりとその違いを理解しておきましょう。
(上皮内新生物は「上皮内がん」と呼ばれることもありますが、この記事では上皮内新生物と記載します。)
- 上皮内新生物とは、「がんの芽」とも言える状態で、浸潤しておらず、転移の可能性がない点が、がん(悪性新生物)との違い
- 上皮内新生物は、がん(悪性新生物)と比べて、治療の際の体力的な面でも経済的な面でも負担が少なくて済む場合が多い
- がん保険で上皮内新生物が保障対象になっているかは、保険会社や商品によって異なるので、自分に合った保険商品を選ぶのがポイント
- 上皮内新生物が進行してがん(悪性新生物)になる前に、早期発見、早期治療することがとても重要
上皮内新生物とは?がん(悪性新生物)とは?
上皮内新生物は、遺伝子に傷がついた異常な細胞のうち、身体の表面を覆う上皮内にとどまっている状態のものをいいます。
多くの場合、手術で取り除くことができ、この段階で切除すれば、転移や再発の可能性はほとんどありませんが、そのままにしておくと上皮内新生物からがん(悪性新生物)に進行してしまう可能性はゼロではありません。
ここからは、がん(悪性新生物)と上皮内新生物の違いについて、少し詳しくご説明していきましょう。
がん(悪性新生物)と上皮内新生物の違い
がん(悪性新生物)は、正常な細胞から発生した異常な細胞の固まりです。
遺伝子に傷がついた異常な細胞が、とどまることなく勝手に増殖を続けていき、染み渡るように広がって、周囲の大切な組織を破壊するほか、身体のあちこちに転移してがん組織を作ります。
その後、増殖したがん組織のさまざまな働きによって、食欲が抑えられて体力が減るとともに、筋肉や脂肪が減って、次第に身体が衰弱していきます。
がん(悪性新生物)の3つの特徴
- (1)自律性増殖:勝手に増殖を続ける
- (2)浸潤(しんじゅん)と転移:周囲にしみ出すように広がり、他の臓器などに移動して増殖する
- (3)悪液質(あくえきしつ):食欲が低下して体力が落ち、衰弱する
一方、上皮内新生物は、上皮の下の基底膜(きていまく)内に留まっているものを言います。
「がんの芽」とも言える状態で、手術で取り除きやすく、浸潤や転移の可能性がほとんどない点が、がん(悪性新生物)との違いになります。
治療の規模・再発率の違い
上皮内新生物の場合、遺伝子が傷ついた異常な細胞は皮膚の表面である上皮内にとどまっています。
そのため、粘膜の表面を浅く切除する手術で終わることが多く、完治のために大がかりな手術が必要になることは少ないようです。
治療費の自己負担もがん(悪性新生物)より少なく収まる場合がほとんどです。
また、上皮内新生物の段階であれば、転移や再発の可能性もほぼありません。体力的な面でも経済的な面でもがん(悪性新生物)に比べて負担が少なく済みます。
上皮内新生物と診断される割合
がんと診断された人のうち、上皮内新生物に該当する人はどの程度いるのでしょうか。
国の統計をもとに、わかりやすくご説明していきます。
がんと診断された人の約1割が上皮内新生物
厚生労働省の調査によると、がんと診断された人のうち上皮内新生物にあたる人は10.9%です。[注2]
ただし、これは全てのがんを対象にした数値であり、部位(臓器)によってその割合は異なります。
上皮内新生物が多い部位
上皮内新生物の診断割合を、部位別に見てみましょう。部位によってずいぶんと診断割合に差があることに気が付きます。
食道(9.7%)、肺(2.4%)等は、上皮内新生物での診断が平均よりも低めの割合である一方、子宮頚部(68.1%)、膀胱(46.4%)、子宮(44.9%)とあるように、上皮内新生物での発見が比較的多い部位もあります。
子宮・子宮頚部は割合が高いため、特に女性は上皮内新生物にも備えておくと安心です。
上皮内新生物はがん保険で保障される?
上皮内新生物は転移の可能性がほとんどなく、手術も小規模で済むことが多いのですが、金銭面のリスクが全くないわけではありません。
このような上皮内新生物のリスク に備える方法の一つに、がん保険があります。
ただし、すべてのがん保険が上皮内新生物を保障の対象としているわけではありません。
がん保険として販売されている商品でも、保障内容やその詳細は、保険会社や保険商品によって異なります。
がん保険に加入する場合には、あらかじめ保障の範囲を確認しておきましょう。
がん保険での上皮内新生物の保障3タイプ
がん診断給付金(一時金)が受取れるタイプのがん保険の場合、上皮内新生物の扱いは大きく3つのタイプに分けられます。
(1) 同額保障
がん(悪性新生物)でも、上皮内新生物でも、同額のがん診断給付金(一時金)を受取れます。上皮内新生物にもしっかり備えたい人に向いています。
(2) 一部保障
上皮内新生物と診断されたときにも、がん診断給付金(一時金)を受取れます。
ただし、その金額は、悪性新生物と診断されたときよりも少なく設定されています。
その割合は50%や10%等、保険会社によってもさまざまです。
(3) 保障対象外
上皮内新生物と診断された場合には、がん診断給付金(一時金)を受取れません。
「がん(悪性新生物)と比べると治療費があまりかからないので、上皮内新生物には自己資金で備える」と考える人に向いています。
がん保険の選び方のヒント
ここまでの説明で、「上皮内新生物の保障はなくてもよい」と思ったかもしれません。
しかし、手術の規模や治療費等の負担が大きくないと知っていても、いざ罹患したときに不安になってしまうことがあります。
そのとき、がん保険によってきちんと保障を備えていれば、安心して治療を受けられます。
がん保険を選ぶ際には、このようなメンタルケアのことも考えて選ぶ必要性があるでしょう。
なお、がん診断給付金(一時金)を比較する際には、初回1回のみなのか、2回目以降も支払いの対象になるのか、といった点もポイントになります。
また、がん保険の保障には、がん診断給付金(一時金)が受取れるもの以外にも、入院や手術をした場合や、通院、抗がん剤治療、先進医療等に備えられるものもあります。
このように様々な保障を選択できる保険商品があるので、加入の前には、保障内容を比較して選びましょう。
がん(悪性新生物)は早期発見、早期治療が大切
がん保険に入れば安心感は高まりますが、同時に早期発見できるようにすることも大切です。
なぜなら、がん(悪性新生物)になる前の上皮内新生物の段階で発見できれば、それほど高額な治療費はかかりませんし、万一がん(悪性新生物)になった場合でも、一般的に早期に治療を開始した方が治りやすいからです。
また、上皮内新生物に対しても、がん(悪性新生物)と同等の保障が受けられるがん保険に加入しておくことで、安心してがんの早期治療を受けやすくなるという人もいるでしょう。
ご自身が納得できるがん保険を選び、早期発見のためにも定期的な検診を心がけましょう。
- このページに掲載している保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。
また、記事中で掲載している保険商品に関して、当社では取扱いのない保険商品もあります。
各保険会社が取扱う保険商品の内容については、各保険会社へお問合せください。 - 本記事は、当社からファイナンシャルプランナーに依頼し執筆いただいた原稿を、当社で編集したものです。
【執筆者プロフィール】
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー
ハートマネー代表
www.heart-money.net
2児の出産後、FP(ファイナンシャルプランナー)とキャリアカウンセラーの資格を取得。子育て世帯や共働き世帯のライフプラン相談やセカンドキャリア層に向けたマネーライフプランのアドバイスが得意。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、家計相談だけでなく執筆や講演業務にも精力的に活動中。
【医療監修者プロフィール】
明星 智洋(みょうじょう ともひろ)
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
日本血液学会血液専門医・指導医
日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
日本内科学会認定内科医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
熊本大学医学部卒業。岡山大学病院にて研修後、呉共済病院や虎の門病院、がん研有明病院などで経験を積む。現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。
血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。
朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。
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