日本の公的医療保険制度とは?
種類や特徴をわかりやすく解説!

健康保険証を持って病院に向かう会社員

日本では、全ての国民が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」を導入しています。

公的医療保険には複数の種類があり、それぞれ保障や給付の内容に違いがあります。

自分はどの種類の公的医療保険に加入しているのか、いざという時にどんなメリット、保障・給付を受けられるのか詳しく知ることにより、万一のときの安心感も高まりますし、民間保険の選び方の参考にもなるでしょう。

この記事では、公的医療保険制度の仕組みについて解説します。その特徴や主な種類、給付制度の概要について理解していきましょう。

この記事のポイント
  • 公的医療保険制度とは、国民全員に加入が義務づけられている医療保険制度のこと
  • 公的医療保険制度には、国民健康保険・健康保険・共済組合・後期高齢者医療制度等の種類がある
  • 公的医療保険制度を利用すると、治療を受けたときの医療費の負担が軽減されるが、差額ベッド代や先進医療の技術料等は全額自己負担となる
  • 公的医療保険制度で保障されない分は、民間の医療保険でカバーするのがおすすめ
【目次】

公的医療保険制度とは?

公的医療保険制度とは、日本国民全てに加入が義務づけられている医療保険制度のことです。どの医療機関を受診したとしても、公的医療保険の保障対象となりますので、患者は自由に医療機関や医師を選ぶことができます。

公的医療保険制度の財源構造は、被保険者や事業主が支払う保険料から約5割が賄われているほか、地方や国庫等の公費からも約4割が賄われています。そのため、患者負担の医療費は全体の1割となっています。こうした公的医療保険制度の導入により、国民全員が少ない負担で質の高い医療を受けられる仕組みになっています。

実際に治療を受けたときの具体的な自己負担割合は以下のようになっています[注1]

年齢 自己負担割合
75歳以上 1割負担(現役並み所得者は3割負担)
70歳~74歳 2割負担(現役並み所得者は3割負担)
義務教育就学後~69歳 3割負担
義務教育就学前
6歳に達する日以降の最初の3月31日まで
2割負担

日本にいると、医療機関を受診したときに、窓口で自己負担分のみ支払うというスタイルは当たり前のように思えますが、例えばアメリカの場合、公的医療保険制度に加入できるのは高齢者や低所得者に限定されており、その他の人々は任意で民間の医療保険に入らなければなりません。

また、民間の医療保険の保険料には公費が投入されないため、一人当たりの負担額は大きく、経済的な理由でどの保険にも加入しない(できない)「無保険者」が全国民の約1割に達しています[注2]

日本の医療保険制度は、非常に水準が高い社会保障制度と言えます。

公的医療保険の種類とは?自分はどれにあてはまるか確認

日本の公的医療保険には複数の種類があり、職業や年齢によって加入できる保険に違いがありますので、自分はどの保険に該当するかをあらためて確認しておきましょう。

以下では、公的医療保険の主な種類と、それぞれの特徴をまとめました。

国民健康保険

国民健康保険とは、都道府県および市区町村が運営している公的医療保険です。

自営業や農業を営む方、専業主婦、年金生活者、無職の方等、特定の企業に属さない方は自治体を通じて国民健康保険に入ります。つまり、社会保険(健康保険)や共済保険、後期高齢者医療制度に入っている方、生活保護を受けている方以外は、国民健康保険に入らなければならないということです。

なお、国民健康保険には「扶養」という概念がないため、例えば自営業者とその配偶者の場合、夫婦それぞれが加入者かつ被保険者になります。

保険料は、前年の所得と加入者数、年齢に基づいて計算されるため、都道府県・市区町村によって1人あたりの負担額に差が出ます。

健康保険

健康保険とは、特定の企業に属する従業員や、その扶養家族が入る公的医療保険です。

健康保険には、大企業の従業員等が加入する「健康保険組合」や、健康保険組合がない企業の従業員等が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)」、海上で働く船員が加入する「船員保険(全国健康保険協会管掌健康保険)」があります。

保険料は、被用者の4月から6月の給与の平均額(標準報酬月額)をもとに算出し、その年の9月から翌年8月まで適用されます。保険料の全額が自己負担となる国民健康保険とは異なり、所属する事業主と被用者で折半する「労使折半」が適用されます。

また、一定の加入条件はありますが、健康保険は被用者と生計を一にする扶養家族(配偶者や親、子等)の加入も可能です。

扶養家族の人数は保険料の計算に関与しないため、扶養家族がいる方は、自身が加入する健康保険に一緒に家族も加入したほうが保険料を節約することができます。

共済組合

共済組合とは、国家公務員や地方公務員、教職員等と、その扶養家族が加入する公的医療保険です。

健康保険同様、保険料は被保険者の標準報酬月額に一定の掛金率を乗じて算出する仕組みになっています。

また、生計を一にする扶養家族の加入が可能である点も共通しています。

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度とは、高齢者の医療費負担を軽減するために設けられた公的医療保険制度です。原則75歳以上の方が加入する制度で、窓口負担が1割になります。また、一定の障がいを持つ65歳以上の方も本人が希望すればこの制度に加入できます。

保険料は後期高齢者医療広域連合によって2年に1度見直されており、保険料の徴収方法には公的年金から天引きする「特別徴収」と、納付書等で保険料を納める「普通徴収」の2種類があります。公的年金を年間18万円以上受給している方は原則としてその年金から天引き(特別徴収)される仕組みになっています。

なお、後期高齢者医療制度の対象者であっても、現役並みの所得(年間の課税所得が145万円以上・年収383万円以上)がある世帯は、3割の窓口負担となります。

さらに2022年度からは、課税所得が年間28万円以上(年収200万円以上)の世帯は、窓口負担が2割になる予定です。

どんな給付制度があるの?

公的医療保険制度には、もしもの場合に備えられるさまざまな給付制度が設けられています。

ここでは、主な給付制度の種類と、それぞれの特徴・要件をまとめました。

療養の給付

被保険者が病気やケガをし、医療機関で診察、薬剤投与、処置・手術等の治療を受けた場合に適用される給付制度です。

療養の給付を受けるにあたって特別な手続きは必要なく、窓口で保険証を提示すれば、自己負担分(1~3割)のみの支払いで診療を受けられます。

入院時食事療養費

公的医療保険の被保険者が、病気やケガで入院した際に療養の給付とあわせて食事の給付が受けられます。1食あたり460円を被保険者が負担します。

入院時生活療養費

65歳以上の被保険者が生活療養をする際にかかる費用(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成)を対象とした給付制度です。

高額療養費

ひと月の医療費が一定水準に達した場合、それを超えた分を払い戻す給付制度です。例えば、保険適用の医療費が月100万円かかったとしても、年収が約370万~約770万円の方の場合、高額療養費制度を活用すると自己負担は月8万7,430円になります。高額療養費制度を利用するには、事後に申請をする方法以外にも、「限度額適用認定証」を用いることで、事前に手続きすることも可能です。また、月々の自己負担限度額は、被保険者の所得や年齢によって区分されている等注意点もあります。以下の記事で詳細を解説していますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

リンク 「高額療養費制度の仕組み、知っていますか?」

傷病手当金

被保険者が病気やケガで仕事の休業を余儀なくされ、かつ事業主から十分な報酬を受けられない場合に給付金が支給される制度です。

病気・ケガによって連続して3日以上働けなくなった場合に適用され、4日目以降から、休業日に対して給付金が支給されます。

1日あたりの給付金額は、「支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」で計算されます。

出産育児一時金

被保険者及びその被扶養者が妊娠85日(4カ月)以後に出産した場合に給付金が支給される制度です。

一児につき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産は40.4万円)が出産育児一時金として支給されます。

出産手当金

被保険者が出産のために会社を休み、その間に給与を得られないときに給付金が支払われる制度です。

給付の対象となるのは、出産の日以前42日目~出産日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間となります。

1日あたりの給付金額は、「支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」で計算されます。

埋葬料

被保険者が死亡したとき、埋葬を行う方に対して埋葬料または埋葬費が支給される制度です。

自営業者と会社員の保障の違い

国民健康保険に加入する自営業者と健康保険に加入する会社員の保障の一番の違いは、出産手当金と傷病手当金の有無です。

出産による産前産後休暇中に受取る出産手当金、病気やケガ等による休業中に受取る傷病手当金は、休業中の被用者を対象とした給付制度です。そのため、特定の会社に属さない方が入る国民健康保険では、これらの手当金を受取れません。

自営業者と会社員の保障の主な違い

自営業者 会社員等
窓口負担割合 3割(義務教育終了後から70歳までの場合)
高額療養費制度 利用できる
出産育児一時金 支給される
傷病手当金 対象外 支給される
出産手当金 対象外 支給される

公的医療保険制度があれば民間保険は不要?

日本は公的医療保険制度が充実しているので、わざわざ民間の医療保険に入らなくても良いのでは?と思う方もいるかもしれません。

しかし、公的医療保険制度はすべての医療費をカバーしてくれるわけではなく、対象外となるものもあります。

例えば、個室や少人数部屋に入院したときにかかる差額ベッド代は全額自己負担になりますし、治療費についても、先進医療の技術料等は、公的医療保険の適用対象外となります。

1カ月の医療費の自己負担が限度額を超えると、高額療養費制度が利用できますが、公的医療保険の対象外であるこれらの費用は計算の対象外となります。

このような公的医療保険ではカバーしきれない負担への不安にも備えたいと思ったら、早めに民間の医療保険への加入を検討しておきましょう。

公的医療保険と民間の医療保険で、もしもの場合に備えよう

日本の公的医療保険制度は非常に充実しており、被保険者は1~3割の自己負担で診察や治療を受けることが可能です。

ただし、公的医療保険制度には適用範囲が設けられており、保険診療とはならない差額ベッド代や先進医療の技術料・自由診療等は適用対象外となります。

自己負担額が大きくなると自身や家族の家計・生活に支障をきたす原因となりますので、公的医療保険制度の対象にならない部分やもしもの時の収入減への備えとして、民間の医療保険への加入もおすすめします。

社会保障制度に関しては2021年10月時点の内容を参考に記載しております。

注釈

【監修者プロフィール】

監修者プロフィール画像

氏家 祥美(うじいえ よしみ)

ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー
ハートマネー代表

2児の出産後、FP(ファイナンシャルプランナー)とキャリアカウンセラーの資格を取得。子育て世帯や共働き世帯のライフプラン相談やセカンドキャリア層に向けたマネーライフプランのアドバイスが得意。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、家計相談だけでなく執筆や講演業務にも精力的に活動中。

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