生命保険の受取人は誰にする?
結婚・離婚時などの変更方法は?死亡保険金の受取人に関する疑問を解説!
- このページに掲載している保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。
また、記事中で掲載している保険商品に関して、当社では取扱いのない保険商品もあります。
各保険会社が取扱う保険商品の内容については、各保険会社へお問合せください。
生命保険に加入するときには、保険金・給付金の受取人を指定します。
医療保険では、給付金の受取人には原則として保障の対象となる被保険者がなります。
また、死亡保険において余命6か月以内と判断されるときに死亡保険金の一部を受け取れるリビング・ニーズ特約の保険金も、保障の対象となる自分自身が受取ることが多くなっています。
では、死亡保険の受取人は誰を指定すると良いのでしょうか。
配偶者、子ども、親・・・保険金の受取人が誰なのかによって、税金の種類や課税対象額が変わるので、受取人は慎重に選びましょう。
また、結婚や離婚等で家族構成が変わったときには、必要に応じてすぐに保険金の受取人を変更しましょう。手続きを怠ると、大切な人に保険金が支払われなくなる可能性があります。
この記事では、生命保険の受取人に関する基礎知識とよくある疑問を解説します。受取人を誰にするか悩んでいる方は、この記事を参考に、適切な受取人を指定してください。
- 契約者・被保険者・受取人の関係性によって、保険金を受取ったときの税金の種類や課税対象額が変わる
- 契約者は保険の名義人であり保険料を支払う人、被保険者は保障の対象になる人、受取人は保険金や給付金を受取る人
- 受取人に指定できるのは配偶者や二親等内の血族が一般的だが、内縁関係にある方や同性のパートナーでも指定が可能な場合もある
- 結婚や離婚等で家族構成が変わったときには、必要に応じて受取人の変更を早急に行うべき
契約者・被保険者・受取人の関係で税金はどう変わる?
生命保険には契約者・被保険者・受取人の3者が登場します。
ここでは、それぞれの役割とその関係性によってどのような違いが出てくるのかを紹介します。
契約者・被保険者・受取人とは?
まず契約者とは、保険会社と保険契約を結び、保険契約上の権利(例えば、契約内容変更等の請求権)と義務(例えば、保険料支払義務)を有する人を言います。つまり、契約者は保険の名義人であり、保険料を支払う人のことです。
また、被保険者は保障の対象となる人、受取人は保険金や給付金を受取る人です。
例えば夫が、自分に万一があったときには妻が死亡保険金を受け取れるように、生命保険に加入してその保険料を自分で支払っている場合、夫は契約者であり被保険者、妻は受取人ということになります。
契約者・被保険者・受取人の関係で税金の種類が変わる
医療保険の入院給付金等は非課税ですが、死亡保険金は、契約者、被保険者、保険金の受取人がそれぞれ誰なのかによって、かかる税金の種類と支払う税金の額が変わります。
考えられるパターンは次の3つです。
パターン1.契約者=被保険者:Aさん、受取人:Bさん
→税金の種類:相続税
パターン2.契約者=受取人:Aさん、被保険者:Bさん
→税金の種類:所得税(・住民税)
パターン3.契約者:Aさん、被保険者:Bさん、受取人:Cさん
→税金の種類:贈与税
パターン1.契約者=被保険者:Aさん、受取人:Bさん
契約者と被保険者が同一人物で、受取人だけが異なる場合、死亡保険金は「相続税」の対象となります。
死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は除く)であれば非課税枠が利用でき、その金額は以下の計算式で算出されます。
計算式①:非課税限度額=500万円×法定相続人の数※
- 相続を放棄した人も法定相続人の数に含む。法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人に含めることができる数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで。
受取った死亡保険金のうち、非課税限度額を超えた部分が相続税の課税対象になります。
計算式②:相続税として課税される金額=死亡保険金-非課税限度額
なお、法定相続人になるのは、被相続人(死亡保険金の被保険者)の配偶者と被相続人の血族です。配偶者は常に法定相続人であり、その他の血族は以下の順序で法定相続人となります。
第1順位:被相続人の子ども(子どもが既に死亡しているときは孫)
第2順位:被相続人の父母(父母が既に死亡しているときは祖父母)
第3順位:被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に死亡しているときはその子ども)
具体例で見ていきましょう。例えば、被相続人に配偶者(受取人)・子ども2人・父母・弟がいる場合、法定相続人になるのは配偶者と第1順位である子ども2人の合計3人ですから、非課税限度額は「500万円×3=1,500万円」となります。そのため、この例の場合、死亡保険金額が1,500万円以下であれば、死亡保険金に相続税がかかりません。
仮に配偶者が受取った死亡保険金が1,500万円の非課税枠を超えていた場合には、その超過した部分を他の相続財産と合算して、相続税を計算します。
ただし、相続税にはさらに基礎控除があります。
計算式:相続税の基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
そのため、相続財産の合計額がこの基礎控除額を超過した場合にだけ、超過分に対して相続税率をかけて税金を計算することになります。すべての相続財産の合計額がこの基礎控除よりも少ない場合には、相続税はかかりません。
贈与税・所得税・相続税の中で最も課税額が少なくなりやすいのは、非課税枠や控除等の優遇が大きい相続税です。税負担の軽減を目的に生命保険を活用する人がいるのはそのためです。
パターン2.契約者=受取人:Aさん、被保険者:Bさん
所得税の課税対象になる場合、住民税の課税対象にもなります。
契約者と受取人が同一人物で、被保険者だけが異なる場合、死亡保険金は「所得税」の対象となります。保険金を一括で受取るのであれば「一時所得」、年金形式で分割して受取るのであれば「雑所得」として、所得税と住民税が課税されます。
一時所得の場合、受取った死亡保険金からそれまでに支払った払込保険料の合計額を差引きます。さらにそこから特別控除50万円を差引くと、一時所得が計算できます※。この一時所得に1/2を掛けた金額に給与所得等他の所得を合計すると、1年間の総所得が計算できます。この総所得に所定の税率(最大45%)を掛けると、税額が計算できます。
計算式①:一時所得=死亡保険金額-既払込保険料の額-50万円(特別控除額)
計算式②:一時所得にかかる所得税額=(一時所得の金額)×1/2
- 保険金を受取った年に他の一時所得がない場合
パターン3.契約者:Aさん、被保険者:Bさん、受取人:Cさん
契約者・被保険者・受取人すべてが異なる場合、死亡保険金は「贈与税」の対象となります。
保険料を支払った人が死亡したわけではなく、第三者がお金を受取るため、契約者が保険金の受取人に財産を「贈与」したとみなされるのです。
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。そのため、贈与税は計算式のように、受取った死亡保険金額から基礎控除110万円を控除して(差引いて)計算した課税価格に対し、所定の税率(最大55%)をかけて計算します。
計算式:課税価格=死亡保険金額-110万円(基礎控除額)
なお、贈与税の基礎控除は、贈与をした人ではなく、贈与を受けた人ごとに年間110万円となります。そのため、死亡保険金を受取った年に他にも誰かから贈与を受けている場合には、1年間に贈与を受けたすべての財産の合計額から110万円を差引いて税額を計算します。
受取人には誰がなれる?条件はあるの?
契約者・被保険者・受取人の関係性によって死亡保険金にかかる税金の種類や支払う税金の額が変わることが分かったところで、死亡保険金の受取人に指定できるのはどんな人なのかを考えてみましょう。
ここでは、どんな人が受取人になれるのか、内縁関係にある方や同性パートナーならどうなのかについて解説します。
一般的には配偶者や二親等内の血族
死亡保険金の受取人に指定できるのは、一般的には被保険者の配偶者や二親等内の血族(子・孫・父母・祖父母・兄弟姉妹)です。
例えば「妻100%」のように1人だけを指定するだけでなく、「妻50%・長男50%」のように複数人を指定することや、その割合についても自由に指定できる保険会社もあります。
ただし、複数人を指定する場合、保険会社によっては死亡保険金が代表者1名にまとめて支払われることがあります。
また、保険期間の途中でも、契約者が所定の手続きをすれば死亡保険金の受取人を変更できます。
配偶者・血族以外は受取人になれるのか
配偶者や二親等内の血族だけでなく、生命保険会社によっては内縁関係や事実婚関係にある方、同性パートナーを死亡保険金の受取人として指定することができる場合があります。
内縁関係や事実婚の場合
内縁関係や事実婚関係にある方を死亡保険金の受取人にするには、内縁関係や事実婚関係にある方を受取人にできる生命保険会社であることと、その生命保険会社独自の基準をクリアしている必要があります。主なポイントは以下の通りです。
- ① お互いに戸籍上の配偶者がいない
- ② 一定期間以上同居している
- ③ 一定期間以上、生計を共にしている
これらの確認のためお互いの戸籍謄本や住民票等の書類が必要となり、訪問調査が行われることもあります。
なお、内縁関係や事実婚関係にある方を受取人として認めない生命保険会社もあります。また、対応している場合も保険金額に上限を設ける等の条件が付くことがあります。加入の基準や必要書類は生命保険会社によって異なるため、きちんと確認しましょう。
同性パートナーの場合
同性パートナーの場合、生命保険会社によっては、自治体が発行する「パートナーシップ証明書」の提出、あるいは上記の「内縁関係や事実婚の場合」同様の基準をクリアすることで、死亡保険金の受取人に指定できる可能性があります。
注意点
内縁関係や事実婚関係にある方、同性パートナーは戸籍上では第三者となってしまうため、法定相続人にはなれません。そのため、死亡保険金にかかる税金に注意が必要です。
例えば保険の契約者および被保険者が夫、受取人が妻の場合、死亡保険金にかかる税金は相続税となり、非課税枠や控除があります。
しかし、受取人が第三者の場合、法定相続人ではないことから、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使うことができません。
さらに、亡くなった方の一親等の血族(子どもや父母)や配偶者でない人が相続した場合には、相続税額の2割に相当する金額を加算した税金を納める必要があります。
受取人についての疑問を解決!
ここでは、結婚・離婚等で家族構成に変化があった場合にはどうすれば良いのか、受取人の変更方法について紹介します。
結婚した場合は?
結婚は保険を見直すタイミングのひとつです。もし独身時代に加入した生命保険があれば、死亡保険金の受取人も含めて見直しを行いましょう。
独身時には受取人を両親等にしているケースが多くありますので、結婚のタイミングで受取人を配偶者に変更することを検討してみても良いかもしれません。
子どもを受取人にすることはできる?
子どもは二親等内の血族なので、死亡保険金の受取人に指定することができます。一般的に受取人の年齢制限はなく、指定にあたって受取人の承諾も必要ないため、産まれてからすぐに指定することも可能です。
ただし、死亡保険金を受取るときに未成年である場合、受取手続きはその親権者(親権者がいない場合は未成年後見人)が行うことになります。
離婚した場合は?
配偶者を死亡保険金の受取人に指定している人が、離婚後も死亡保険金の受取人を変えずにいた場合、万一のときにはそのまま元配偶者が保険金を受取ることになります。自分の親や子ども等に死亡保険金をのこせなくなってしまうので、もし離婚をすることになったら、はやめに受取人の変更手続きを行うと安心です。
受取人が先に亡くなった場合は?
自分の死亡保険金の受取人として指定していた人が、残念ながら自分よりも先に亡くなってしまうこともあります。その場合、受取人を変更せずに放っておくと、自分に万一があったときには元々指定されていた受取人の法定相続人全員が受取人になります。
特定の人を指定したい場合には、はやめに変更の手続きを行いましょう。
受取人はどうやって変更すれば良いの?
受取人を変更するには、まず保障の対象である被保険者の同意が必要です。
そのため、変更の旨を被保険者に伝え、承諾を得ることから始めましょう。
受取人変更の具体的な手続き方法は生命保険会社によって異なりますが、一般的には以下のような流れで行います。
- 1. 「保険証券」等で該当契約の証券番号を確認する。
(変更したい契約が複数ある場合は、該当する全ての証券番号を確認) - 2. 生命保険会社の担当者やコールセンターに電話し、手続き書類一式を取り寄せる。
- 3. 書類に必要事項を記入し、提出(郵送)する。
(生命保険会社所定の手続き書類以外にも契約者の本人確認書類等の添付が必要になることも) - 4. 生命保険会社が確認のうえ、手続完了。
- 5. 手続きが完了した旨のお知らせが届く。
- 1.「保険証券」等で該当契約の証券番号を確認する。(変更したい契約が複数ある場合は、該当する全ての証券番号を確認)
- 2. 生命保険会社の担当者やコールセンターに電話し、手続き書類一式を取り寄せる。
- 3. 書類に必要事項を記入し、提出(郵送)する。(生命保険会社所定の手続き書類以外にも契約者の本人確認書類等の添付が必要になることも)
- 4. 生命保険会社が確認のうえ、手続完了。
- 5. 手続きが完了した旨のお知らせが届く。
遺言に受取人変更の旨を記すことにより、実質的に変更することも可能です。
大切な人に保険金を届けよう
死亡保険金は、配偶者や二親等内の血族を受取人に指定するのが一般的です。保険料を支払う契約者、保障の対象である被保険者、保険金を受取る受取人の関係性によって、死亡保険金を受取ったときにかかる税金の種類や支払う税金の額が異なるので注意しましょう。
また死亡保険金は、基本的には指定した受取人に確実にお金をのこすことができるため、「お金に名前を書く」と表現されることもあります。自分に万一が起きたとき、大切な人に保険金が届くように、受取人を指定しておきましょう。
そして、結婚や離婚等で家族構成が変わったときには受取時のトラブルを避けるためにも、保険金受取人の変更を検討しましょう。
- 記載の内容は、2023年4月現在の税制・関係法令等に基づき税務の取扱等について記載しております。今後、税務の取扱等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。個別の税務の取扱等については(顧問)税理士や所轄の国税局・税務署等にご確認ください。
- このページに掲載している保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。
また、記事中で掲載している保険商品に関して、当社では取扱いのない保険商品もあります。
各保険会社が取扱う保険商品の内容については、各保険会社へお問合せください。 - 本記事は、当社からファイナンシャルプランナーに依頼し執筆いただいた原稿を、当社で編集したものです。
【執筆者プロフィール】
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー
ハートマネー代表
www.heart-money.net
2児の出産後、FP(ファイナンシャルプランナー)とキャリアカウンセラーの資格を取得。子育て世帯や共働き世帯のライフプラン相談やセカンドキャリア層に向けたマネーライフプランのアドバイスが得意。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、家計相談だけでなく執筆や講演業務にも精力的に活動中。